生徒
生徒座談会
金蘭千里の
今とこれから
2017.04.19 本校会議室にて
【座談会出席者】山田華穂さん(高校1年)女子テニス部キャプテン/西尾祐希人さん(高校1年)写真部/垰本葵さん(中学2年)吹奏楽部/水谷海斗さん(中学2年)サッカー部/【聞き手】川野貴志 金蘭千里中学校 国語科教諭
人間性と学力を育むための「道場」として、師弟の関係によって作られる「私塾」として、教師が生徒一人ひとりとていねいに向き合い、確かな学力向上の実績を伸ばしてきた金蘭千里。
2015年に50周年を迎えたことを機に新たな改革として、今までの伝統を守りながらも時代のニーズに合う学校づくりに取り組んでいます。
そんな改革のまっただ中に入学した、現在高校1年、中学2年の生徒さんと、金蘭千里で教鞭を執って14年の川野先生が、金蘭千里の"今"について語り合いました。
入学前と後の
金蘭千里の
イメージ
学校の改革が始まってから入学した中学2年の垰本さんは、受験するまで金蘭千里という学校についてまったく知らなかったそうです。入学することになってはじめて学校のことを調べ「3年前まで、ヤバかったんだな、と思いました」と笑います。以前はクラブ活動が盛んではなかったことや、学校行事も控えめだったことにふれ「勉強しかしない学校と思った」と言います。しかしいざ入学してみるとイメージとは違っていたそうで「今はいろいろ変わってきていますよね。思っていたより勉強ばかりではないし、部活も週4日練習できていますし、充実しています」と、勉強とクラブ活動のバランスにも満足している様子です。
おうちの人にすすめられて入学を決めたという中学2年の水谷くんは「たしかに勉強はたくさんしなければいけませんが、楽しい雰囲気で授業を受けられますし、入って良かったと思います」と、楽しく勉強がしっかりできる環境だと言います。
入学してから学校の改革が始まったという高校1年の山田さんも、中学入学前には不安があったそうで「部活が盛んじゃなかったと聞いていたので、入学には若干抵抗はありました」。勉強と両立できる程度のクラブ活動はしたいという思いだったとか。しかし山田さんの入学と同時期に始まった改革によって、その不安は解消されていきました。「入学した年にクラブの種類が増えたり、活動する曜日や練習回数も増えていきました。外部の人達も『金蘭にこんなクラブがあるんだ』という視点を持ってくれて、勉強ばかりのイメージはなくなってきた」と、学校のイメージが変わってきていることを実感しているようです。
「僕が所属している写真部は、入学した年にできたクラブなので1期生なんです」と話すのは高校1年の西尾くん。写真部は運動系のクラブと違って、個人が各々作品を撮っていく活動が中心になりますが「部全体で、どこに写真を撮りに行くか決めたり、課題を決めたりしながら」部員全体で活動内容を作っていったそうです。「今までの良い所を残しつつ、新しい要素を取り入れていくことで、金蘭千里の魅力が増えたと思う」と、学校の取り組みを喜んでいます。
高校1年の2人は、入学してから制服も変わりました。自分達の次の学年から新しい制服の後輩が入ってきたのです。西尾くんは「最初の1年は、まだ移り変わる1年目だったので金蘭に所属している意識はあったけど、2年目になって始業式に行くと(自分と違う制服の生徒がいて)『ここ、金蘭やった?』と不安がよぎりました」と冗談まじりに話してくれました。中学3年になった頃には、中学の中で旧制服の自分達の方が少数派になったことで「ちゃんと自分は、金蘭に登校してきてるんかな、合ってるのかなって…アウェー感があった」と、改革期ならではの気持ちを話します。山田さんも「旧制服が気に入っていたので、高校1年でいざ新制服に変わるとなって、何か名残惜しいような気持ちもありました」と、旧制服への愛着ものぞかせますが、「新制服を着てみると、デザインもかわいいし、今は気に入っています」と好感触です。西尾くんも「ブラウスが紫というのはあまり見ない色なので、良い色だなと思います」と、個性的な色調を気に入っている様子です。
勉強と両立しながらも、
充実したクラブ活動
かつて金蘭千里のクラブ活動は小規模なことで知られていましたが、生徒達の「自主的な活動にさらに挑戦していきたい」という声に応え、50周年改革の一環として活動の種類や規模を大幅に増やしました。また、以前は本格的なクラブ活動は中学3年からだったものが、2014年度より中学1年から全員が入部し、活動できるようになりました。今回、座談会に参加してくれた4人も、「部活が少ない」という入学前のイメージをくつがえすように、現在は充実したクラブ活動を送っています。
サッカー部に所属している水谷くんは「練習がしんどいこともありますが、部員同士で楽しく練習できています。対外試合も多いのですが、あまり対戦成績は良くない」と苦笑い。毎日練習をしている他の学校と比べると、金蘭千里のクラブ活動は勉強との両立を考え、活動日数は抑え気味。「あまり勝てないけれど、自分達なりに一生懸命やっているので、今後も続けていきたい」と、前向きな声を聞かせてくれました。同じく運動系のテニス部に所属する山田さんは「勉強と両立できればいいなと思っていたので、週2~3日の活動日数はちょうどいい」と、勉強との両立ができる練習量に納得しているようです。
文化系ながらも活動日が週4日という吹奏楽部に所属し、打楽器を担当する垰本さんは「まず個々の楽器の基礎練習。その後パート練習の他に、他のパートの楽器の音を聞いて合わせていく練習も。他パートと合わせるのはむずかしいですが楽しい」。中高一貫校の金蘭千里では、中学1年から高校2年までの幅広い年次の生徒が一緒に活動することについて「気を使ったりしないの?」という川野先生の問いかけには「"敬語をきっちり話す"ということ以外は変な気を使うこともない関係性が築けている」とのことで、楽しくコミュニケーションが取れているようです。
数あるクラブ活動の中でも、比較的自由に活動できるのが写真部のようで「あまり上下関係は厳しくなく、時間的な拘束も少ない。勉強との両立はやりやすい」と西尾くん。クラブ員みんなと、または個人的に撮影に出かけ、さまざまな写真展に作品を出すなど、精力的に活動しています。
以前よりクラブ活動が活発になったとはいえ、しっかり勉強するという金蘭千里の環境は変わりません。クラブと勉強との両立はどのように工夫しているのでしょうか。
「入学して、クラブに入る前までは、家に帰ってからの時間を勉強に充てていたのですが、入部後はその時間が取れなくて、慣れるまでは少し大変でした。帰宅後の時間を勉強に充てられない分、授業をしっかり受けるようにして補っています」と話すのは垰本さん。クラブ活動で忙しくなった分、よけいに授業に集中することができているようです。
水谷くんは「練習で疲れて、家に帰ってから寝てしまうことは多々あります。それを補うためには、昼休みとか、ちょっとした空き時間で勉強をするなど、少しの時間も無駄にしないように」と、上手く時間の使い方を工夫しています。「中学1年から、上手く時間を使っているね」と川野先生も驚いていました。
「先生に"まとめノート"を作れと言われています。教科ごとに学校の授業のポイントを自分なりにまとめてノートに書き込んでいくので、ポイントを整理でき、見直してもわかりやすくなる」と話すのは山田さん。限られた時間で効果的に勉強しているようです。
クラブとの両立に限らず、独自の勉強のしかたを語ってくれたのは西尾くんです。「『これはやらないといけない』という優先順位をつけて勉強する。苦手科目は、やる前から『無理だ』と思わず、まずやってみる気持ちで取り組む。テストの後は何が悪かったのか、すぐに見直して覚える」といった基本的なものから「苦手なものこそ、あえて自分に課して、追い詰める」という精神的なことも話してくれました。自分に叱咤激励していくことで、自分をマネジメントしていくことが大事だと言います。
勉強方法は人それぞれではあるものの、クラブ活動を楽しみながら勉強にも全力で取り組もうと努力する姿が浮かんできます。
昔も今も変わらない、
毎朝の20分テスト
変わりゆく金蘭千里ですが、ずっと変わらないものが「20分テスト」。在校生、卒業生に学校生活の話を聞くと、必ず出てくるのが「毎朝の20分テスト」に関するエピソードです。創立以来続いている「20分テスト」は、今や金蘭千里の代名詞。最近ではこのシステムを取り入れる学校も増えてきているようで、その学習効果の高さを物語ります。
「20分テストは魅力的。勉強の習慣をイヤでもつけさせてくれる」という西尾くん。入学間もない頃は、毎日「明日は社会だ、明日は数学だ…」と追われるような気持ちだったそうですが、中学1年の冬頃には勉強習慣も身について、慣れてきたといいます。垰本さんや水谷くんも、中学1年の2~3学期には慣れてきたと話しますが「20分テストは慣れてきて点も取れるけど、課題テストや総合テストといった、季節ごとの大きなテストはまだうまくいかない」と水谷くん。そこで先輩の山田さんが「20分テストさえちゃんとやっていたら、ある程度、課題テストや総合テストでも、積み上げたものがあるので、ある程度点は取れる」とアドバイス。川野先生も「間違った部分の見直しなど、日頃の20分テストの取り組み方の工夫が、総合テストなどの大きなテストにも生きてくる」とエールを送ります。毎日の20分テストは慣れるまでは大変なようですが、その積み重ねこそが、確かな学力を形成していることがうかがえます。
4人とも異口同音に「入学したての頃は、毎日追われるように勉強していた」という20分テストですが、いつしか日々勉強する習慣がつき、毎日がテストという環境にも慣れてくると言います。特に山田さんは「充実感を感じるのは20分テスト」ときっぱり。「毎日のテストで小刻みに席次が出るので一喜一憂することもありますが、そのたびに反省したり考えたりできる」と、かなりの手応えを感じているようです。「長期の休みで20分テストがないと、なんだかリズムが狂う」とも。それほど、金蘭千里の生徒にとって20分テストは日々の習慣として身についていると言えそうです。
さまざまな学校行事を
通して高まる、
クラスの団結力
学校生活を語る上で、勉強やクラブ活動と並んで生徒達の印象に残るのが、学校行事です。金蘭千里では、キャンプ、高中祭(体育の部・文化の部)、校外学習、合唱祭など、さまざまな学校行事を通して、授業では体験できない多くのことを学び、人としての成長につなげています。
「キャンプは印象深いけど……辛かった」と話すのは水谷くん。中学1年のキャンプで、炊事を生徒達で行う際、飯ごう炊さんのご飯が炭のようになってしまったのだとか。食事に関わる失敗は、辛い思い出として残ってしまったようです。
入学間もない5月に実施されるキャンプは、まだクラスメイトとも打ち解けていないタイミングでの行事。西尾くんは「中学の間は、新しいクラスに入って、お互いが『この人はどんな人?』って思っている時期でのキャンプなので、それをキッカケに打ち解けていく」と振り返るとともに、キャンプが成功するためのポイントも語ってくれました。「料理ができる男子がいるかどうかで決まります。何よりも炊事。それさえできれば、成功」。やはり食事が成功の鍵になっているようです。
山田さんは、年々行き先や行動が変わっていくキャンプについて「だんだん楽しくなってきた」と話します。中学1年のキャンプでは、重い機材を運ぶなど、大変な思い出が多いようですが「去年は大山に3泊4日で行きましたが、学校でできないことができるのも楽しい。中学2年から、キャンプファイヤーではそれぞれ出し物を準備するんです」と、後輩達にキャンプの楽しさを教えてくれます。「中学3年で私のクラスは、学年全体を巻き込んで○×ゲームをやりました。問題とルールを決めておけば、練習はあまり必要ない。先生にまつわるクイズは、盛り上がりました」。川野先生も興味深そうに「それは盛り上がりそう。アイデア次第で、いろんな出し物ができそうですね」と話していました。
中学生と高校1年が各クラス対抗で行う合唱祭も、印象深い学校行事のようで「去年の合唱祭は担任の柴山先生が率先して引っ張ってくれたんです。強烈なリーダーシップでまとめてくれたので、厳しい面もありましたが、歌った後は、大きな達成感があった」という西尾くん。クラスが一丸となって協力し合うことが必要な合唱祭の練習。いかに全体がまとまるかが鍵のようです。「僕のクラスは、特に男子が部活を理由に練習を休んだりして、まとまった雰囲気はなかった。でも本番では声の大きさで優勝できましたが」と水谷くん。それに呼応するように垰本さんも話し出します。「私のクラスもまとまらなかったです。男子は声も出さない、練習も来ない。練習に来ても並ばせるところから大変でした。女子も言うことを聞いてくれない人もいて…」と、悔しい想いを語ってくれました。そこで高校生の2人が、上手くいくコツを伝えます。「合唱祭は、男子がマジメにやるかどうかで結果が出る」と西尾くん。山田さんは「男子対女子という構図はできますね。去年の私のクラスは指揮を担当した女子が、すごくまとめ上手だったんです。やる気のない男子を怒るだけでなく、良い所を誉めるなど、上手く男子を乗せていたのでまとまった」と、成功例を挙げながら話してくれました。このエピソードには川野先生も「そうやって人を動かす力は、すごいね」と感心しきりの様子でした。
また"マジメで勉強ばかりの金蘭千里"というイメージを、良い意味で壊すようなエピソードを話してくれたのは山田さんです。「文化祭も印象的。シンデレラをやったのですが、男子が女装するんです。最初はイヤがりながらも、どこかで『しかたがない』と腹をくくってくれて。当日のダンスシーンで、機材トラブルで音が出ないハプニングが起きた時も、女装した男子2人がアカペラで歌い出して場をおさめたんですよ。機転の利いた対応が素晴らしかった」と、少しくだけた雰囲気を楽しみながらも、クラス全員で力を合わせている様子がうかがえます。そこで「女装はうちの学年、恒例なんです」と西尾くん。中学2年の頃から毎年女装するクラスがあり、各クラスに女装担当がいるんじゃないかと話します。「でも、男同士でハグしたり手をつないだり、意外性もあって微笑ましい」と続けます。川野先生も「普通に演技するより女装くらい思い切った方が、やりきれるのかもしれないね」と意外な"女装効果"について笑顔を見せていました。
私達が思う
"今の金蘭千里"。
そして将来
最後に「金蘭千里について」「今後のこと」について話してもらいました。
「もう少し休みがほしい」という水谷くんですが「勉強は充実しているので、勉強に関して辛いことはない。部活も楽しく練習できている」と、日々の学校生活は充実している様子です。「登下校中に四季が楽しめる」と、学校の立地にも魅力を感じているとか。将来は「文系か理系かも決めていない。将来、何かに役立つように勉強している」と、将来の選択肢を広くとらえていました。
垰本さんも「校舎がキレイ。勉強と部活がほどよく充実している。他の学校では部活が忙しすぎるという話を聞くけれど、金蘭千里はちょうどいい」と、勉強とクラブ活動の両立に満足しているようです。将来はやはり未定だそうで「いつか、就きたい仕事ができた時に役立つように、選択肢を広げたい」と、今目の前にある勉強に励んでいるそうです。
「勉強面ではかなり充実している」と語る西尾くんは、教師との関係性について力説します。「先生と生徒がオープンな関係でいられる。ひたすら黒板に向かって『わかるか?』と言われるだけでは、僕らの方も受け身の姿勢で話を聞きがちになってしまう。授業の中での対話があり、心を開いて授業に入っていけるオープンな関係があるからこそ、授業も能動的に聞けるし、質問にもどんどん行ける。すぐに聞いて解決して定着させていけるのは、ありがたい」と、毎日の授業においてもかなり充実感を得ているそうです。将来は理系に進みたいと思いながら「いろいろな仕事があると思うし、あえて紆余曲折のある人生を送りたい」と言います。
山田さんも「毎日が充実している」と即答。「毎日20分テストがあって、部活もあって、1日疲れて、寝て、起きてという習慣になってしまっているので、夏休みになると、1日何かが足りないような気になる」と忙しいながらも、勉強やクラブ活動などに確かな手応えを感じている様子。「わかりやすい先生も多いので魅力的な学校です」と、西尾くんと同様に教師陣の魅力についても語ってくれました。将来は理系に進もうと考えているものの、どんな専門分野があるのかを大学のセミナーなどに参加しながら模索しているようです。
中学生と高校生、違った学年の4人でしたが、「しっかり勉強できる」「ほどよくクラブ活動もできる」と充実した学校生活を楽しんでいるようでした。学校行事やキャンプなどでの、ちょっとした悔しい想いも、学生生活の1コマ。今の充実感を楽しみながら、これからも金蘭千里で素晴らしい時間をすごして欲しいものです。